TechOptimizer 3.0 J Professional Edition 試用記

TechOptimizer 3.0 J Professional Edition 試用記

1月26日に発売された、TechOptimizer3.0日本語版を試用する機会がありましたので、印象を記します。ただし、主に「Effects」モジュールのみの評価になっていますので、今後少しずつ追加していきたいと思います。

構成

全体には、従来のTechPotimizer2.5英語版の構成を踏襲していますが、新しく「プロセス分析」と「InternetAssistant」というモジュールが加わり、下記のような構成になっています。

1.プロダクト分析

フローチャート的な図版でシステムの構成を描き、不必要な部品を「トリミング」して、システムを簡素化するモジュール。

ある構成要素を取り除くと、別の何かがその構成要素が果たしていた機能を代わりに果たす必要があるわけですが、このときは、問題を設定して後述の「Effects」モジュールにジャンプするなどの連携が図られています。たとえば、避雷針を廃止し、代わりに周囲にある空気に「(雷の)電気を流す」という機能を果たさせるとすると「空気に電気を流させたい」という問題を設定した状態で後述の「Effect」モジュールを起動させることができます。

2.プロセス分析(新機能)

製品の製造プロセスについて「プロダクト分析」と同様の見方で改善を行うツール。

#プロダクト分析・プロセス分析は、GE社のVEツールを元にして、TRIZ(ITD)の一手法「トリミング」を組み合わせたものです。

3.Feature Transfer

複数の設計の「いいとこどり」設計の支援を行うモジュール。

4.Effects

TRIZの「物理的・化学的・幾何学的効果の工学的応用の知識ベース」に対応。実現したい機能やキーワードから、応用可能な効果・事例を検索する辞書。最初に使ってみるならば、このモジュールです。今回のバージョンでは、効果・事例のほとんどがアニメーション化され、目を引きます。

また、今回のバージョンから効果と特許事例が同列に扱われるようになっています。たとえば、「機能グループ」の切り口で、「物質:分離する」→「固体物質を浄化する」と絞り込んでいくと、「エアナイフ(事例)」「コアンダ効果(効果)」などが表題の文字コード順に表示されます。事例と効果はアイコンの色でのみ判別できます。

この中から「効果」を選んで表示させると、右側の説明文中にその効果の応用事例のリストが表示されるのですが、いささか紛らわしいといえます。

【裏技?!】事例を選んでいない状態で「Contrl Link」(ツールバー右方の青いボールに下から二つの矢印が向かっているボタン)を選ぶと、効果だけが表示されるそうです。(三菱総研堀田様小西様、情報感謝します。'99/2/25)

事例の増加は、ユーザーの要望を素直に反映させたもので、実際「TRIZの教科書に載っている事例は古くさい重厚長大なものばかりだ」という従来の批判に見事に応えたものになっているのですが、効果と事例をばらばらに示されることで、背景の考え方が見えにくくなった恨みがあります。また、アニメーションでの説明のために全体のレスポンスが重くなっており、かなり高速なパソコンを必要とします。(今回はPentiumII 233MHzのノートPCでベータ版を試用。)

ちょうど、MSWordやExcelが、様々な機能追加をして動作が重くなり、分かりやすさが損なわれてきたのと同じ様な感じでしょうか。

5.Principles

TRIZの「システム対立克服の典型的技法」に対応。いわゆる対立マトリクス(アルトシューラーのマトリクス)の検索を画面上できるようにしたものです。効果の解説や事例にリンクしており便利です。

6.Prediction

TRIZの「発明問題に対する標準的手法(標準解)」と「進化のトレンド」に対応。物質−場のモデルに対し「第三の物質の導入」などの定石を示したり、進化のトレンド図を示したりします。進化のトレンド図を閲覧するだけでも様々なアイデアが浮かぶと思います。

7.Internet Assistant

インターネット検索エンジンや特許データベースとの接続機能です。「Effect」から移動すると、効果や事例の表題が検索キーワードのウインドウにコピーされて起動しますが、残念ながら、今のところ「Internet Assistant」では英単語による英語圏の検索エンジンの検索しかできません。時期未定ですが、バージョンアップされ日本語検索に対応する予定ということです。

全体の印象

TechOptimizerのEffectモジュール(やりたいことやキーワードから、適用できる効果・事例を引き出す「逆引き辞書」)の最も基本的な使用法である「様々な耳慣れない効果や事例を次々にめくり、参考になるものを見つける」という使い方は、従来の英語版ソフトでは日本人のエンジニアには困難であったといわざるを得ません。

実際に日本語版を動かしてみて、この点の改善は期待していた以上のものがあり、「Effects」などの基本的部分ならば、特に説明を受けなくても、設計者が独習で使えるレベルになった感があります。ただし、TRIZの基本的な考え方は是非知っておく必要があります。(私のお薦めはもちろん「TRIZ入門」です。)

一方で、事例が大幅に増えたことで、特に「Effects」では、やりたいこと(機能)と効果の関係がわかりにくくなってしまったのが悔やまれます。従来の様に、やりたいことから効果のみを表示し、さらに事例を必要に応じて表示させる構成も選べるようにして欲しいと思います。応急的には、見出しを「効果:コアンダ効果」の様にしてくれれば見出しのキーワードで「効果:」と指定することで効果のみに絞り込んで表示できるのではないでしょうか。

また、全体のレスポンスも改善を期待したいところです。「ツール」−「オプション」−「Effects」で「プレビューのヒントを表示する」のチェックをはずすと若干体感速度が向上するようです。(今回はベータ版で評価しましたが、製品版ソフトでは若干レスポンスが改善されているようです。)


最後になりましたが、ソフトの試用、本記事の掲載、画面図の使用を快諾いただいた三菱総研さんに感謝します。


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