公理的設計法入門

公理的設計法入門

1.設計の世界の4つの領域

公理的設計法では設計プロセスを以下のようにモデリングします。

各領域は、ある領域を「何をやりたいか(What)」と見ると、その右隣の領域は「それをどうやって実現するか(How)」を示すという相対的な関係があります。

設計プロセスは一方通行ではなく、下記のようなフィードバックループを繰り返し経てより高いレベルの設計解へと進化していきます。

2.必要機能FR(Functional Requirement)

公理的設計法の第一のステップは、FRすなわち必要機能の設定です。

FRとは「設計目標の特徴を完全に表すような最少の独立な必要条件」を指します。FRは顧客領域の顧客の要求属性を満たすように設定します。顧客の要求属性は一般にあいまいなもので定式化は困難ですが、Customer Attributeの頭文字をとってCAと表すことがあります。

例:一般的な横開きドアの冷蔵庫は、ドアが断熱・食品の出し入れの両方に影響を与えるため、FR相互の干渉が起きているよくない設計といえます。

なお、FRと混同されがちな概念に制約条件があります。Constraintの頭文字をとってと表示する場合があります。CはFRと異なり、ある値以下であればよいという制限値であり、他のCやFRと独立である必要がありません。

DPは実体領域における設計変数(Design Parameter)、PVはプロセス領域におけるプロセス変数(Process Variable)です。様々な設計分野における例を以下に示します。

表.各種設計における4つの領域

4.設計公理

独立公理:必要機能の独立性を保て。

設計のプロセスにおいて、機能領域におけるFR(必要機能)を満たすように実態領域におけるDP(設計変数)を決めていくとき、DPが対応するFRのみを満たすような写像関係にしなければいけない。

情報公理:情報量を最小化せよ。

独立公理を満たすすべての設計のうち、最小の情報量のものが最良の設計である。

5.領域間の往復(Zigzagging)と階層構造

機能領域と実体領域の間の往復(Zigzagging)を通じて、FRと対応するDPは階層構造に分解されます。ある階層のFRに対応するDPを選定しない限り、より下位の階層に分解を進めることはできません。

Appendix:公理的設計法における系・定理の一覧


さらに詳しい内容は、

設計の原理

マサチューセッツ工科大学教授 N.P.スー著
東京大学教授 畑村洋太郎 監訳
朝倉書店 ISBN4-254-23071-0 C3053
をご覧下さい。機能の独立性の定量評価などの他、豊富なケーススタディも収録されています。


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